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わかば会研修センター

トピックス

おすすめの書籍 「変身」 フランツ・カフカ著

2021-08-05
あらすじ
グレゴール・ザムザは朝起きると自分が大きな虫に変身していることに気付く。
そして周りの人々を困惑させたり、冷遇されたりする不条理小説。
 
 
多様性
東京オリンピック2020のテーマは「多様性」だそうです。
障がい者福祉も、社会が人の多様性を認めようとする試みの一つだと思います。
僕が多様性という言葉を聞くと思い浮かべるのがこの変身という小説です。
学生の頃初めてこの小説を読んだ時、単純でつまらない小説だと思いました。
今の仕事をしている中で、障がい者福祉に通じる何かがこの小説中にあると感じ、再読したところ心に深く突き刺さりました。
 
僕が思うこの小説のテーマは
「人間は自分自身で自分を選んで生まれてくるわけではない」ということです
人間は、身体、性別、環境等、ゲームのアバターのように自分自身で自分を選んで生まれてくるわけではありません。たまたまそうであるだけです。そして自分と同じ人間はどこにもいません。すなわち人生とは基本的に誰にとっても孤独で不条理なものなのではないでしょうか。だからこそ、そんな自分というものを拒絶された時は傷つくし、自分がこの世界に受入れられたと感じることができれば、喜びを感じることができます。
多様性を認めるようという価値観の根底には、人間が共通で抱える人生の不条理さに対する抵抗があると思います。
そして障がい者福祉とは、その人そのものと正面から向き合い、認め、孤独に寄り添うことのできる意義深い仕事だとこの小説を読むたび、決意を新たにします。
 
多様性を認めるということはたくさんの「自分」を認めるということだと思います。
インターネットが普及し、簡単に自分を表現して社会に発信できる世の中です。
ネットを通じて他者と繋がって自分を誰かに受け入れてもらうとはいい事ではあると思いますが、逆に自己表現が苦手な利用者が、自分を内側に抱えて静かに生きているのを見て、人間としての凄みを感じることがあります。
自分を外に表現して受け入れてもらうことだけが全てではなく、自分の殻をしっかり持って、自分の心の声に耳をすませて歩いていこうと思います。
(研修センター 渡部 和長)
 
 
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